みなさんこんにちは

今日で2月も終わりです。
最近のソウルは気温が5度を上回る日も多く、暖かさが感じられるようになってきました。

今回は昌徳宮(창덕궁/チャンドックン)の後苑(후원/フウォン)をご紹介します。
昌徳宮は、1405年の朝鮮王朝第3代国王・太宗の時代に、正宮である景福宮に続き離宮として創建されました。
景福宮の修理や火災などによって、正宮としての役割も果たしています。
昌徳宮の大きな特徴は、自然の地形をそのまま残して宮殿の建造物や庭園が造成されていることです。
歴代の王たちに好まれた宮殿ともいわれています。
1997年にはユネスコの世界文化遺産にも登録され、世界各国から多くの観光客が訪れています。

昌徳宮が最も美しい宮殿といわれる理由には、美しい庭園が広がっていることにもあります。
宮殿施設北側の広大な敷地に庭園が続いています。
この庭園は、“後苑“や“秘苑”などと呼ばれています。
庭園は、王室の休息空間としてだけではなく、学問や教育の場ともなっていました。
文禄・慶長の役では多くの被害を受けましたが、その後の歴代王によって何度も修復され、現在の姿となっています。

庭園は奥に進むにつれて林が深くなり、ソウルの都会とは思えないほどの自然が感じられます。
現在、後苑は決められた時間にガイドの案内によって見学することができます。

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後苑には大きく分けて4つの庭園があります。
こちらは後苑の中でも最も中心的な存在といわれる、芙蓉池(プヨンジ)を中心とした庭園です。
芙蓉池の一角には、蓮の花の形をした芙蓉亭(プヨンジョン)の東屋があります。
池では釣りをしたり、舟を浮かべて楽しんだといわれています。
また池の周りには、宙合樓(チュハムヌ)と暎花堂(ヨンファダン)があります。
宙合樓は、王室の図書館として使用された2階建ての建物です。
暎花堂は、休息場所であり、王が立ち会う科挙試験なども行われたところです。
それぞれの建物に特色があり、庭園の中でも特に美しい景観となっています。

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こちらは愛蓮池(エリョンジ)周辺の庭園です。
もともと池の中に島があり、その島に東屋がありましたが、現在は池の北側に東屋をみることができます。
池の入口には有名な不老門(プルロムン)があります。
不老門は、一枚の岩から造られ、王の不老長寿を願って造られた門です。
今ではこの門を通ると長生きするといわれています。
愛蓮池の南には、倚斗閣(ウィドゥハプ)があります。
朝鮮王朝第23代国王・純祖の息子の孝明世子によって建てられた書斎です。
彩色がされていない質素な建物となっています。

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庭園の間にある演慶堂(ヨンギョンダン)は、純祖の時代に貴族の屋敷を真似て建てた施設です。
王が、宮殿の外の貴族たちの生活を体験するために建てたといわれています。
建物は、男性の居住空間であるサランチェと女性の居住空間であるアンチェに別れています。
別々の建物が並んでいるように見えますが、建物の内部は繋がっていて、
一番端の建物の窓から見ると、奥の部屋まで繋がっていることがよく分かります。
当時の貴族たちの生活を知る貴重な資料ともなっています。

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こちらは觀纜池(クァルラムジ)周辺の庭園です。
池の周りには、扇の形をした觀纜亭(クァルラムジョン)と六角形で二重屋根が特徴の尊徳亭(ソンドッジョン)という東屋があります。
この一帯は後苑の中でも最も遅くできたといわれています。
中でも最も古い東屋の尊徳亭には、天井に青龍と黄龍の双龍が描かれ、王権の威厳を象徴しています。
觀纜池は半島池とも呼ばれ、朝鮮半島の形をしているともいわれています。
池の近くには、勝在亭(スンジェジョン)と砭愚榭(ピョムサ)という東屋もあります。
砭愚榭の前には敷石がありますが、これはまだ幼い王世子が、
一国の王として威厳のある歩き方を練習するためのものであったといわれ、八字型の歩幅に合わせて造られています。
見学に訪れた小さな子供たちが、真似をしながら歩く様子はとってもかわいかったです。

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後苑の中でも一番奥にあるのが玉流川(オンニュチョン)周辺の庭園です。
この川の周りには、翠寒亭(チハンジョン)、逍遥亭(ソヨンジョン)、
太極亭(テグッジョン)、清漪亭(チョンイジョン)、籠山亭(ノンサンジョン)の5つの東屋が建てられています。
朝鮮王朝第16代国王・仁祖の時代に岩を削って造られた泉もあります。
水の上に杯を浮かべて詩をつくる“流觴曲水宴””という宴が開かれたといわれています。
岩には仁祖が書いた「玉流川」という文字と第19代国王・粛宗の書いた詩が刻まれています。
この庭園には水田も造られ、王自らが農作業を行い、農民の生活を経験したところでもあります。
水田に造られた東屋は、唯一藁葺きとなっています。

後苑は、朝鮮時代からの伝統的な庭園としてだけではなく、
さまざまな見所や逸話が隠され、見学に訪れる人々を魅了しています。
韓国歴史ドラマに関心のある方は、どの建物や庭園が、
どの王の時代に建てられたものなのかを考えてみるのも楽しいと思います。
王の日常的な生活の様子にも触れることができます。

後苑は季節ごとに違った美しさが感じられます。
冬の季節には寒さの中での見学となりますが、雪化粧をした庭園もとっても美しいです。

韓国旅行へお越しの際は、昌徳宮の後苑にも行ってみてください。